静と動
僕のスチールカメラマン、正確にはRCサクセションのオフィシャルカメラマン時代のエピソードを、数回に分けて書いてみたいと思います。

当時の僕は、RCのマネージャーの特別な計らいで、ライブ中はどこからでも自由に撮っても良いという、ありがたいお墨付きを頂いていました。
言うまでもなく、ろくに経験も実力もない新人カメラマンにとって、身分不相応の贅沢極まりない環境でした。
しかしそれは同時に、良い写真が撮れて当たり前という、重いプレッシャーのかかる立場でもあったのです。
1年も過ぎた頃でしょうか、当然のごとく僕は壁に突き当たっていました。

どうすれば納得のゆく写真が撮れるのか? 試行錯誤の日々が続きました。
ツアーパンフやポスター用の、無難な写真は撮れていました。
(伝説のバンドを前にして、使えない写真を撮ることの方がよほど難しかったのでしょうが、、)
しかし、初めて彼らのライブを目の当たりにしたとき、鳥肌の立つような激しい衝動が生み出した、何の計算もない写真とはどこか違っていたのです。

RCのライブで感じるあの高揚感を、どうにかしてフィルムに焼き付けたい。
そのためは、技術的に思いつくことは何でも試してみました。
高感度フィルムをさらに増感したり、超スローシャッターで撮ってみたり、ストロボをスローシンクロさせてみたり、etc.
それでも、頭の中のイメージとはどこかズレていたのです。

マンネリ?

そんなことを意識するあまり、少々クールになり過ぎていたのではないかと反省した僕は、あるとき熱狂するファン達と一緒に歌を口ずさみながら、気軽なカメラワークで撮影してみました。
カメラブレなど気にせず、ノーテンキ、ノーファインダー状態でシャッターを切り続けました。
久しく忘れていたあの感動が蘇り、写真を撮る喜びに満ちあふれた2時間が、あっという間に過ぎました。

これだ!
大切な何かを取り戻したような興奮に浸りながら、現像の結果を待ちました。

結果は散々でした。

ピントも露出もバラバラ、使える写真など殆どありません。
フィルムの束を部屋の隅に放り投げ、絶望のどん底に落ち込んだ僕は、しばらく立ち直れませんでした。

でも楽しかったよな。
数日後、天然の僕はそう考えてみたのです。

もう一度、その日のポジを見直してみました。
気分一新、捨てられていたカットの中から、少しでも良いところを探してみたのです。
これで露出が合っていたなら 、 このピントのずれは OK 、、 この感じは好きかも 、、、

その後も、そうしたトライ&エラーを繰り返し、拾い集めた要素を少しずつ取り入れていくことで、徐々にではありますが自分の理想とする写真に近づけていったのです。

醒めた目で熱く撮る。

このときの学習が、自分の映像哲学の座右の銘になっています。


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