番外編(正の連鎖)
先日都内某所にて、故忌野清志郎氏の追悼イベントがありました。
とてもささやかな、それでいて心のこもった温かい集いでした。
実は僕は、そこにゲストの1人として呼ばれていたのでした。
無芸自慢の男ですから、当然歌や演奏を披露できるわけもなく、昔撮影したキヨシローさんの写真を集まったお客さんに見てもらい、撮影時のエピソードを話すのが役目でした。

ここ数ヶ月、事務所に籠もりがちの生活が続いていた僕は、どちらかと言えば元気が少々不足気味の状態でした。
そういう時の自分には、物事全てが億劫になってしまう傾向があります。
約束事に対して何となく消極的になってしまい、ズルズルと先送りした結果、直前駆け込み型のパターンとなってしまうのが常なのです。

このイベントの話も、何ヶ月も前に主催者に頼まれておきながら、事務所の引越しと時期が重なったのを言い訳にして、直前までほったらかしておいたのでした。
確かに、数十年ぶりに昔の写真をを引っ張り出し、山のようなストックの中から数十点をセレクトし、なおかつデジタル化する作業になるわけですから、気合いを入れないと出来ないことではあります。
一旦受けた以上さっさと済ませてしまう方が楽なのは分かっていても、相変わらず悪癖を捨てきれずにいる自分なのでした。
案の定、今回も同じような経緯をたどり、何とか写真を選び出したのはイベント前日のことでした。

会場のライブハウスにたどり着いた僕は、古い友人でもある主催者Kさんの姿を探したのですが見当たらず、仕方なく隅の方で所在無げに座っていたのです。
そこではちょうど、出演バンドのリハーサルが行なわれていました。
ただでさえ現在の音楽シーンに疎い僕ですから、目の前のミュージシャン達の顔も名前も、知るよしがありません。
先に書いたように消極的な精神状態の僕でしたから、あまりこちらからは皆さんに目を合わせないように、できるだけ存在感を消していたのです。

しかしながら、数年ぶりに足を踏み入れたライブハウスで聞く音楽は、僕のくすんだ身も心も少しずつ洗い流してくれるようでした。
すると突然、一人のミュージシャンが僕の前に立ちはだかり、自己紹介と共に勢い良く右手を差し出してきたのです。
突然の出来事に一瞬戸惑った僕でしたが、反射的に笑顔で握手を交わしていました。

初対面の人間に対し、こんなにも気持ち良い挨拶のできる人は初めてだったので、先刻までの淀んだ心がみるみる軽くなり、直前まで耳にしていた彼の歌声の素晴らしさを、僕の方からも素直に告げることができたのでした。

懐かしいミュージシャンとの感激の再会を果たした後も、次々と人々が現れ同じように挨拶をしてくれたのでした。
念のために申し添えておきますが、僕は決して有名人ではありませんし、彼等に顔を知られている訳でもないのです。
にも関わらず、このように接してくれる人達からは、ある種共通した雰囲気が感じられました。
それは爽やかなオーラと言うか、心を開きっぱなしにした、笑顔が良く似合う、(真の意味で)イカした人達なのでした。

もはや僕の心中の憂鬱な雲は姿を消し、そこには晴れ晴れとした青空が広がっていました。
そのうち僕の社交的な一面がノソノソ顔を見せ始め、すぐに完全支配してしまいました。
スタッフとの打ち合わせや、下手をすると大きなトラブルになりそうな出来事も、こちらの心に余裕があるため、難なく解決してしまいました。
気分の高揚した僕は、楽屋でのミュージシャン達との会話もはずみ、 彼らも緊張がほぐれてノリノリになり、お客さんも喜び盛り上がり、その後のすべての展開がスムースに流れてゆきました。

結果、その(心のわらしべ長者)的な人間関係が、その日のイベントを大成功に導いてくれたのです。
もちろんこれは主催者の皆様の努力の賜物であり、単なる僕の思い込みでしょうが、、(笑)

長く生きていると時折このような場面に出くわしますが、これだけ長く続いたのは初めてのことでした。
世間では(負の連鎖)という言葉がよく使われますが、それは(正の連鎖)とでも呼びたくなるような、とても素敵な晩だったのです。

キヨシローさん ありがとう!









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