心の岩盤浴
前回登場したMASAKIさんのコンサートに行って来ました。
気持ちの萎縮してしまいそうな冷たい雨の中、すでに大勢の方々が集まっておられました。
老若男女のお客さんで満員のホールでしたが、皆さんの喜々としたご様子の訳は、主催者が振る舞っていたワインにもあったようです。
とても珍しい赤のスパークリングワインの美味しさは格別で、そこをパーティー会場のように思わせてくれた主催者の思惑に、僕もまんまとハマってしまったようです。

やがてピアノとチェロの奏者と共に現れたMASAKIさんは、いつもと変わらぬ笑みを浮かべ、静かに演奏会をスタートさせました。
リラックスした観客席に波長を合わせるかのような彼の演奏は、決してテクニックをひけらかすものではありません。
観客席を見渡しながら、たおやかに時に激しく弦を操ります。
曲の合間には、作品のタイトルやその込められた思いを、少々言葉足らずの日本語で語りかけてくれます。
僕はクラシックコンサートでは大概眠くなるのですが、ここでは不思議にそうはなりません。
あっという間に前半が終了してしまい、自分の顔に異常を感じた僕は、そこではっと我に返りました。
1時間近くずっと微笑んでいたのでしょう、表情筋が疲れていたのです。

普段一人きりの時間が多い僕は、悲しくも無表情生活者です。
ちりも積もれば何とやらで、いつのまにか小難しい男に見られるようになってしまいました。
周りを見渡すと、ワイングラスを片手に楽しそうに会話を交わす人々でごった返しています。
(恐らく)いつもは僕と同様であろう紳士方の和やかな笑顔は、ここが熱海あたりの宴会場じゃないかと錯覚させるほどでした。

後半が始まり、新たなアレンジをまとった馴染みの曲達は、僕の顔を更に弛緩してくれるのでした。
MASAKIさんの真正面に陣取っておられるご婦人方の、余にも楽しげなご様子に圧倒された僕は、それをどこかで見たような気がしてなりませんでした。
そう、ペ・ヨンジュン氏のイベントで目にした光景が、そこに再現されていたのです。
しかも、あの場では見ることの出来なかった、紳士方のご満悦のお姿まで添えて。

長年音楽の仕事に浸かりながら、こんな絵に描いたような幸せな現場には、なかなか立ち会う事は叶いませんでした。
プロなんだから上手いのは当たり前、その向こうに何を見せてくれるのかが重要なのです。
メロディーを奏でるアーティストの想いが伝わらなければ、それはただの見せ物でしかありません。
凝り固まった人々の表情と心(元は一緒)を優しく解きほぐしてくれる、そんなアーティストを僕も待ち望んでいました。

オリジナルの表情にすっかり慣れた僕は、贅沢な時間を賞味しながら、こう思っていました。

『みんなで温泉に浸かってるみたいだ。』

芸術は人を感動させる為にある。そう確信した夜でありました。

















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