番外編(その3)
2日目は、このイベント直前に出版されたペ・ヨンジュン氏の著書『韓国の美をたどる旅』にまつわる内容で、一貫してまとめられていました。

大河のようにゆったりと流れる、韓国の民族音楽と清楚な女性たちの舞に囲まれ、自らが創作した詩を静かに朗読する彼を見ていると、作り物のステージがいつの間にか幻想的な空間に見えてくるから不思議でした。
一人芝居のセリフのようにも聞こえてるその言葉たちからは、彼の祖国に対する想いが素直に伝わってきました。

その後、続けて繰り広げられた宮廷衣装をまとった老若男女のパレードは、僕の故郷である琉球の文化と大本で繋がっているような、不思議な懐かしさを届けてくれるのでした。

『なんか、予想と違うぞ!』

悠久の歴史を目の当たりにしているうちに、 僕の中では何故か自分の祖先を見ているような、不思議な感情がこみ上げてきました。
そしてその後に披露された、琴とヒップ・ホップのステージを見終えたときでした。
心の奥底で何かが大きくはじけたのです。

琴を奏でる美女たちの輪の中でブレイクダンスを踊る集団は、渋谷あたりでよく目にする今時の若者そのものでした。
無機質なコンピューターのビートと、繊細な指先から奏でられる古典的な調べは、まさに水と油の関係だと思われました。
ところが、僕の先入観は見事に裏切られました。

この異質な組み合わせは、優しい姉とやんちゃな弟のように、時に戯れ合い時にぶつかりながら、自由気ままに自分たちの競演を楽しんでいるように見えたのです。
見ているこちらまでも心が浮き浮きしてくるような、本当に素晴らしいコラボレーションでした。
そして僕はまさしくその時、この楽しさ(無限の可能性)を第三者に伝えようとしている、背後の人物の意図に気づいたのです。

この2つの音楽の形は、間違いなく韓国の今を象徴しているのでしょう。
さらには、古い文化と新しい文化、古い歴史から新しい歴史への橋渡しを表現しているようにも思えてきました。
観光ガイド的、表面的ではない、現在進行形の本当の祖国を理解して欲しいという、その者の想いがしっかりと伝わってきた瞬間、僕は猛烈に感動を覚えたのです。

トップスターに上り詰めた者のエネルギーの使い方は、多分幾つもあると思います。
さらに人気を得る為のプロモーション活動や、ファンサービスに徹するイベント等々、、、

しかしながら、自分の影響力を使ったこんな素敵な企画が他にあるでしょうか?
ファンを喜ばせながらも、さらに大きな世界へと誘ってゆく。
その志の大きさに、同性として胸打たれたというのが正直な感想なのです。

そしてその思いが確信に変わったのが、イベントの終盤に彼が中央ステージのベンチに腰掛け、家族に宛てた葉書にメッセージを書く場面でのことでした。

その様子はリアルタイムで場内のスクリーンに大写しされ、彼の一挙一動を見守る5万人の集中力は、レーザー光線のように熱く彼の手元に注がれていました。

そんな状況下でも何ら動じる事無く、彼は黙々と(ちょこっと微笑みながら)ペンを走らせるのでした。
僕なんかよりよっぽど達筆で、書き順を改めて教えてもらった字もあったほどです。(笑)
驚いた事に、ペンの動きに一切の迷いは見られませんでした。
中継車の中でも、『本当に下書き見えない?』なんて声が飛び交うくらい、見事なパフォーマンスでした。
BGMとしての二胡の演奏が2回繰り返されたのも、予定以上に文章が長くなったからなのでしょう。
体調のすぐれない中、2日間のイベント最終盤でのこの行為には、僕はただ感心する他ありませんでした。
同じ事をハングル文字でやれと言われても、僕にはとうてい自信はありません。

正に地味な、普段の彼の努力が忍ばれる行為でした。
こんなところにも、彼の家族に対する計り知れない愛情が感じられたのです。

そしてペ・ヨンジュン氏の日本語による長く丁寧な締めの挨拶には、(不覚にも)ウルッときてしまい(年のせいか最近涙もろい、、)
最後に彼が口にする『愛してます』という言葉には、例えが適切でないかもしれませんが、偉大な宗教家に通じるものを感じた僕でありました。

もはや目の前の人物は、単なるスーパースター像から大きく変貌を遂げていました。
同じ男として、人生の目標を高い場所に見定めている男に抱く感情は、『畏敬の念』がぴったりくるのでした。


(最終回へ)


ーーーーー


思いがけない程のアクセスを頂き、突然石をひっくり返されたダンゴ虫の如き心境のワタクシですが、改めてペ・ヨンジュン氏の影響力の大きさに驚いているところです。
普段ひっそりと、気の向いたときにカルト話を書き連ねているオタク作家のブログだけに、家族の皆様には貴重なお時間を拝借しましたことを、この場を借りてお礼申し上げます。
なお、本ブログの他サイトへの転用の件ですが、僕としてはヘタクソな文章をよそで披露されることへの気恥ずかしさはありますが、別段気にはしておりません。
弱小サーバーを利用している関係上、アクセスが分散されるメリットも感じております。
ご心配頂いた方にも、重ねて感謝致します。

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番外編(その2)
イベントは、あの名曲と共に静かに始まりました。
もはやエバーグリーンと化してしまった感のある『冬のソナタ』のテーマ曲は、僕自身胸の奥がキュンとするような、不思議な懐かしさを呼び起こしてくれます。
場内はというと、感情を押し殺したような(ありきたりの表現ですが)嵐の前の静けさに包まれているようです。
観客の誰もがオーケストラの方向を凝視しています。 この場の雰囲気を味わい尽くそうとするかのような、刹那の思いがこちらにも伝わって来ます。
やがて、どこかで生まれた静かな悲鳴が、さざ波のようにドーム全体に広がると、ステージ奥の幕がゆっくり上がり、待ちに待ったこの夜の主人公の登場です。

ゆっくりと中央ステージへと歩を進めるペ・ヨンジュン氏を、10万個近い瞳がまんじりと見やっています。
深深と降りしきる雪と切ないメロディーが相まって、 殺風景な舞台通路をドラマのワンシーンのように見せてくれます。
そして、張りつめていた感情の防波堤はあっけなく決壊してしまい、抑えきれない各々の想いを口々にする女性達で、繊細な音楽ももはや途切れがちに聞こえてくるだけです。
同時に、人気のない中央ステージに大きな木がゆっくりとせり上がってきます。
その下には、もう一人の主人公チェ・ジウが待ち合わせの場所で一人佇んでいるという設定です。

この状況を冷静に見守りながら、カメラマンに的確な指示を与えなければいけない立場の僕でしたが、知らぬ間にこの物語の世界に引きずり込まれてしまっていました。

刻一刻と縮まってゆく2人の距離に反比例するかのように、場内の歓声は高まるばかりです。
もはや、観客達の感情は巨大なひとつの情念となり、舞台上の2人のまわりをグルグル渦巻いているようです。

そして、ついに物語の主人公が(曲のピークに合わせるかのように)しっかりと抱き合った瞬間、この場に居合わせたすべての人々の感情が(多分血圧も)一気に振り切れたのです。

2人の頭上で鳴り響く場違いな仕掛け花火も、 形容しがたい音圧の歓声の前では遠慮がちに響いているだけでした。

ひたすらベタな演出ではありますが、これ以上感動的が演出があるでしょうか?
恐るべき韓流ドラマの世界観を、僕はあらためて見せつけられた気がしました。

若干というか、かなり冷めた目でこのプロジェクトに臨んでいた僕でしたが、1ラウンド初っ端に1発でノックアウトされてしまいました。

『逆らうより、理解しよう。』

そう僕が思ってしまったのには、この場を支配しているこの巨大な愛情には、どんな個人の感情をも押さえつけてしまう、圧倒的な説得力があったからです。

その後、韓国人のゲスト達とのトークコーナー等が続き、インタビュアーの質問に誠実に答えるペ・ヨンジュン氏の人柄が次第に見えてきました。

人は目を見れば全てが分かる、とよく言われます。
彼の目線は、自らの受け答えの最中や他のゲストが話をしている間もしっかりと定まり、その思慮深さは選ぶ言葉からもじんわりと伝わってきました。
体調の悪さからか、若干テンションの低さは感じられましたが、それでも彼の人間性を推し量るには十分でした。

イベントが進むにつれ(お決まり事とはいえ)延々と続く彼を褒めたたえる美辞麗句に、心の奥底で反応するネガティブな感情を意識しつつも、僕のペ・ヨンジュン氏への好感度は次第に上がってくるのでした。

そしてついに、1日目のメインイベントがスタートしました。
ステージの後方に鎮座していた巨大雪だるまのオブジェが2つの気球になり、それぞれに乗り込んだペ・ヨンジュンとチェ・ジウが、場内をまわるというものでした。
当初、リハーサルの段階では1周と聞いていたのですが、それが直前になり2周に変更されたのです。

1周するだけでもかなりの時間を要するのにも関わらず、倍の時間を費やしてでもファンサービスを行うということが、僕には驚きでした。
体調の悪さは会場の家族(ファンのことをそう呼ぶ習わし)誰もが知っています。
イベンター的にも十分満足のゆく状況だったので、本人の意向以外にはこの大きな変更は考えにくいものでした。

しかし、それでも彼は(彼女も)笑顔を絶やさず、会場の隅々にまで頭を下げ続けていたのです。

半分あきれながらその様子を見ていた僕は、彼らの愛情とプロ根性を見せつけられた思いでした。

『だから、これだけの人が集まるんだ。』


家族の想いがやっと解けた、いつまでたっても浅はかな僕でありました。



(つづく)



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